公開:2026年10月9日 | 著者:檜垣 昌幸(税理士・TOSS合同会社 代表社員)

人を採る前に、利益と資金で確かめたいこと

採用前に仕事と費用を慎重に考える経営者のイラスト

仕事が増えて、社長も社員も手いっぱい。「もう一人いれば受注を増やせる」と考える一方で、毎月の給与を払い続けられるかが気になる。採用の判断では、任せる仕事、その仕事が生む利益、立ち上がるまでの資金をつないで考えます。

人を増やして何を変えたいのでしょうか。受注を増やすのか、社長の仕事を渡すのか、品質を安定させるのか。目的を具体的にすると、必要な人材と、採用後に確認する結果が見えてきます。

この記事の目次
  1. 忙しさを、任せたい仕事に分ける
  2. 給与に加えて、継続費用と立ち上がり費用を見る
  3. 追加費用を賄うには、いくらの売上が必要か
  4. 売上が立ち上がるまで、資金が持つか
  5. 採用と、今の仕事の見直しを比べる
  6. 御社の数字で、次の一手を考えませんか

忙しさを、任せたい仕事に分ける

採用する前に、直近1〜2週間の仕事を並べてみます。繰り返しの作業、専門的な判断、顧客対応、社長が最後に確認する仕事。それぞれに、頻度、時間、必要な技能、引き継ぐ手順を書きます。

採用後の仕事を「社長の手伝い」とだけ決めると、何をどこまで任せるかが曖昧になります。「毎月の資料受付と不足確認を担当する」「見積り作成から受注までを担当する」など、役割と完了の基準を具体的にします。

採用の必要性と求める人材を、経営課題や業務から整理する考え方は、中小機構「人材確保支援ツール」でも示されています(確認日:2026年10月9日)。

給与に加えて、継続費用と立ち上がり費用を見る

採用の負担を給与だけで判断せず、会社が負担する保険料、備品、教育、採用活動なども分けて見積ります。保険料の実額や雇用条件は、担当の専門家と確認してください。

確認する費用例
毎月続く費用給与、会社負担の保険料、通勤費、利用ツールなど
初めに発生する費用求人・紹介、端末、備品、初期研修など
教育・管理の負担社長や既存社員の指導・確認にかかる時間

指導時間は、すぐに支出が増えなくても既存の仕事を圧迫します。誰が教えるか、その間の業務をどう回すかも、採用計画に入れておきましょう。

追加費用を賄うには、いくらの売上が必要か

採用による毎月の追加固定費を、仮に40万円とします。これは給与と関連費用をまとめた説明用の仮定で、保険料率などの標準額を示すものではありません。増える仕事の限界利益率が40%なら、費用を賄う追加売上は次のようになります。

追加費用を賄うための売上
= 追加固定費 ÷ 増える仕事の限界利益率

40万円 ÷ 40% = 月100万円

月100万円の売上が増えても、そのうち60万円が材料や外注などの変動費なら、残る40万円で採用の追加費用を賄う計算です。この条件では、利益の上積みはまだありません。

さらに月10万円の利益を増やしたいなら、必要な追加売上は(40万円 + 10万円)÷ 40% = 125万円です。この計算は、増える仕事の利益率が一定で、それ以外の追加費用がないという前提です。費用と利益の関係は、中小機構「損益分岐点を使った目標売上高」を参考にしています(確認日:2026年10月9日)。

社長の仕事を引き継ぐ採用であれば、空いた時間を何に使うかも確認します。提案や経営相談、品質の改善など、採用の目的に沿った結果を決めておくと、効果を振り返れます。

採用後に必要な追加売上
利益10万円の上積みに、売上25万円を追加費用を賄う月100万円 → 利益も増やす月125万円

棒の長さは0〜150万円の共通目盛りで比較

架空例・月額・税抜。増える仕事の限界利益率40%、追加固定費40万円、それ以外の追加費用がないという前提です。

売上が立ち上がるまで、資金が持つか

採用直後から予定どおりの売上が増えるとは限りません。初期費用が先に出て、給与が発生し、売上の入金が後になる場合もあります。

仮に、初期の支出が50万円、毎月の追加支出が40万円、最初の3か月は採用による追加の入金がないと置くと、採用関連だけで必要な資金は50万円 + 40万円 × 3か月 = 170万円です。

この170万円は架空条件での試算です。会社全体では既存の入出金、納税、借入返済もあります。月ごとの資金計画に加え、売上の立ち上がりが遅れる場合も比較して、手元資金の見通しを確認します。

採用後の追加支出は、時間とともに積み上がる
3か月後までに170万円初期50万円 + 月40万円 × 3か月。追加の入金がない場合の試算です。
累計(万円)05010015020050万円90万円130万円170万円初期1か月後2か月後3か月後

架空例。会社全体の必要資金ではなく、採用関連の追加支出だけを示しています。入金の時期によって手元資金への影響は変わります。

採用と、今の仕事の見直しを比べる

採用案とあわせて、繰り返し作業の自動化、一部業務の外注、仕事の分担変更、採算の低いサービスの見直しも検討できます。それぞれ、費用、準備時間、品質、顧客への影響が異なります。

採用が必要な場合でも、手順を整えておくと任せる範囲が明確になります。入社後1か月・3か月に何ができる状態を目指すか、誰が教え、いつ確認するかを決めましょう。

人を増やす判断は、御社の未来への投資です。任せる仕事、増える利益、立ち上がりの資金を並べ、「この条件なら進める」と言える計画をつくることが、最初の一歩になります。

御社の数字で、次の一手を考えませんか

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